金属活性種についての基礎研究

Early-Lateヘテロバイメタリック錯体の合成と動的挙動解析

触媒プロセスの構築を目指した錯体設計

配位不飽和種の発生方法 ハプティシティー変化触媒プロセスの構築においては、反応基質と作用する、配位不飽和種と言われる活性種をいかに容易に発生させるかが鍵となります。配位不飽和種の発生方法として、配位子の金属との結合原子数の変化、ハプティシティーを変化させる方法(図)があります。そのような配位子として、ヘテロ原子を含むアリル系配位子に着目して錯体設計を行っています。ヘテロ原子の特性を利用した種々の配位形態を持つ遷移金属錯体を合成して、その構造、挙動、触媒としての展開を検討しています。

一例として、チタンスルホンアミド錯体の合成を達成しており、その結晶構造、溶液中での動的挙動、また活性が高いとは言えませんがエチレン重合活性があることを見出しています。特に、動的挙動解析より、期待通り、ハプティシティー変化を起こしていることが確認できたのは興味深い結果です。

チタンスルホンアミド錯体の合成とその結晶構造
チタンスルホンアミド錯体の溶液中での動的挙動

論文 "Bidentate" and "Tridentate" Sulfonamide Ligands for Titanium Complexes
: Crystal Structures and Solution Dynamics Elucidating an η2 or η3-Coordination Mode.
Hamura, S.; Oda, T.; Shimizu, Y.; Matsubara, K.; Nagashima, H.
Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions 2002, 1521-1527


アミノホスフィンを配位子に用いたELHB錯体合成

我々は次の展開として、アミノホスフィン(RN-PR'2)を架橋配位子として持つ錯体の設計を行いました。この配位子は、下に示すようなハプティシティー変化が可能です。さらに、この配位子を用いることで、金属間の協奏作用が期待できるEarly-Late Heterobimetallic(ELHB)錯体の構築の可能性も開けます。

アミノホスフィン(RN-PR’2)を架橋配位子として持つ錯体の設計

ホスフィノアミドのリチウム塩を四塩化チタンと反応させることで、チタンホスフィノアミド錯体の合成を達成しています。その溶液中の動的挙動を解析することで、アミノホスフィン配位子のPPh2部分がTiへの可逆な配位が示唆されました。そこで、このチタン錯体を金属含有二座ホスフィン配位子とみなすことで、白金を作用させてTI-Pt ELHBを合成に成功しています。

TI-Pt ELHB錯体の合成

TI-Pt ELHB錯体の結晶構造この錯体の特徴は、6員環部分が舟形となっており、またTi-Pt間に結合が存在します(右図)。このTi-Pt間の相互作用は、Pt状の置換基を変えることで系統的に変化することも分かりました。この構造を活かすことで、金属間の協奏作用を生かした触媒反応が設計できる可能性が示されました。
現在我々は、このMetalloligandとしての機能を生かした、様々なELHB錯体の合成と、その動的挙動解析を行っているところです。