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「元素相乗系化合物の化学」の
発足にあたって


領域代表 宮浦 憲夫(北海道大学大学院工学研究科)

現代の科学と科学技術の発展は、原子レベルで構造制御された機能性物質群の創製に大きく依存します。これは、複数の元素がある種の組成と配列あるいは空間配置に制御されたとき、元素間に様々な相互作用や協同効果が現れ、単独の元素では実現できない新たな機能が生まれるからです。本特定領域研究では、複数元素の相乗的な働きによって優れた機能を発現する分子性化合物やそれらの複合体を「元素相乗系化合物」と定義し、その基礎と応用を追求することにより、真に独創的で優れた機能をもつ新反応や新物質を開発することを目指します。

本特定では、周期表の中程に広がる高周期元素を主な対象として、これらの元素間結合が創り出す機能性化合物の化学を展開します(図1)。これらの化合物は機能の宝庫と言われる魅力的な研究対象ですが、一般に不安定で合成は困難であると考えられてきました。1990年代以降に、我が国で二つの特定領域研究が実施され、高周期元素化合物の合成法が集中的に研究されました。これにより、優れた機能をもつ分子性化合物を、さまざまな元素を用いて精密に合成できる時代へと変わってきました。我が国が世界にさきがけて培ってきたこれらの研究成果をもとに、高周期元素化合物の高度利用をめざした機能重視の物質化学に挑戦したいと考えております。具体的には、新たな元素間結合の発見と構築および機能の解明、典型元素/遷移元素あるいは典型元素/典型元素の特性を融合した高活性触媒や機能性物質の開発、遷移元素を2次元あるいは3次元に精密に構造制御して組み上げた金属クラスターやナノクラスターの構築と機能の発見、複合型元素化合物を用いてはじめて実現可能な高効率有機合成反応・無機合成反応の開発などがあります(図2)。



特定領域研究は異分野の研究者間の情報交換と研究協力を目指した科学研究費であることに最も大きな特徴があります。従って、勉強会・セミナーなどを通じて班員の交流を深め、各自の専門性を活かした共同研究を積極的に推進したいと考えております。元素化学の大いなる可能性を協同して追求することによって、これらの課題に挑戦したいと考えておりますので、皆様方のご協力をお願い申し上げます。