所長挨拶

 先導物質化学研究所は、機能物質科学研究所と有機化学基礎研究センターとの融合と再編によって平成15年4月に発足した附置研究所です。本研究所のミッションである「物質化学の研究を先導して世界最高水準の成果を創出し、物質化学の国際的拠点を形成すること」は発足から18年を経た現在に至るまで一貫して変わっていませんが、第二期中期目標期間(平成22〜27年度)には、より具体的な三つのミッション、すなわち、(1)共同利用・共同研究拠点として、物質・デバイス領域の先端的・学際的共同研究を推進すること、(2)産官学連携の環境を整えて実践的研究を推進し、我が国の産業の発展に貢献すること、(3)諸科学の融合研究領域としてのシステム生命科学、分子集積・分子組織化を基軸としてグリーン・ライフ分野研究を先導すること、が再定義され、第三期中期目標期間(平成28〜令和3年度)の現在に至っています。

本研究所は、原子・分子・ナノスケールからマクロスケールにわたる物質の構造、物性・機能の階層的なしくみに対応する四研究部門(物質基盤化学、分子集積化学、融合材料、先端素子材料)と平成27年度に新設した戦略的部門であるソフトマテリアル国際部門の計五部門から成り、約50名の教員(教授、准教授、助教)と研究員、研究支援スタッフが筑紫・伊都の二キャンパスにおいて先導的な物質化学研究を展開しています。2011〜2020年の10年間に約2000報の査読付原著論文および総説を発表し、それらの論文・総説は約34000回の被引用を通じて国内外の化学コミュニティに貢献しています。

本研究所の研究成果は、所員による、新規機能性分子合成、計算科学、分子集積、ナノマテリアル、ソフトマテリアル、バイオ材料、無機材料、炭素材料、デバイス、炭素資源変換などの多岐にわたる科学・化学・工学の分野で特徴のある研究の推進、そして、本研究所客員教員、学内、学外、産業界、そして海外の研究者や技術者との協働と連携の賜物です。令和元年度は、学内の四附置研・センターの共同により汎オミクス計測・計算化学センターを設置し、所内では部門を横断する機動的研究組織(環炭素化学クラスター、ナノマテリアル国際コ・ラボラトリー)を立ち上げ、新学術領域開拓を目指す新たな体制を整えつつあります。

本研究所と北海道大学電子科学研究所、東北大学多元物質科学研究所、東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所、大阪大学産業科学研究所が参画するネットワーク型の物質・デバイス領域共同研究拠点事業を推進し、平成27年度には、活動の成果に対してS評価が与えられました。当事業は平成28年度に二期目を迎えましたが、平成30年度の中間評価においてもS評価を受けました。附置研ネットワークの特性を活かした組織的共同研究は、今後もわが国の物質・デバイス研究の飛躍的推進を担う核として有効に機能すると確信しています。一方、基礎化学分野では北海道大学触媒科学研究所、名古屋大学物質科学国際研究センター、京都大学化学研究所元素科学国際研究センターとともに「統合物質創製化学研究推進機構」で連携し、新規物質創製を統括的に研究する新国際研究拠点を設立しました。戦略的ガバナンスのもと、産官学連携や国際連携を通じて研究成果を新学術や産業創出につなぐ取組に加えて、次世代の国際リーダーとなる研究者を育成しています。大学院教育においては、伊都地区では理学府および工学府、筑紫地区では総合理工学府、統合新領域学府を担当しており、研究所の特徴を生かした学際的な物質化学の教育と研究指導を行っています。

先導物質化学研究所・所長 吉澤 一成