EVENTS 講演会

12月5日(木)「有機金属クラスター高分子を用いてグラフェン壁で出来た多孔性炭素電極材料を作る」講師:西 信之 先生

先導研の皆様

 平成25年度 九州大学先導研客員教授 西 信之先生(東京工業大学特任教授,分子科学研究所名誉教授、元九大理学部教授)の講演会を12月5日(木)に筑紫地区で、翌日の6日(金)に箱崎地区で、それぞれ異なるご講演内容で開催いたします。
 西 信之先生は九大理学部化学科のご出身で、構造化学研究室の教授として6年間、教育・研究にご尽力された後、分子科学研究所の教授として異動され、平成23年度に退職されました。現在、過去の基礎研究のご経験を活かして、メソ多孔性炭素ナノ構造体の創成と応用研究の分野で益々ご活躍されています。
 西先生から頂いた2回のご講演の概要を添付しました。 多数の皆様のご来聴を歓迎致します。        融合材料部門 辻 正治

 

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 2-1)  西 信之 先生 筑紫地区講演会

講演題目 :「有機金属クラスター高分子を用いてグラフェン壁で出来た多孔性炭素電極材料を作る」

日  時 : 2013年12月5日(木) 16:00~

場  所 : 九州大学筑紫地区A棟(先導研南棟)1階112講義室

講演概要 : 「九州大学から分子研に戻って、新しいテーマを「有機基と金属原子が結合してなる巨大クラスター分子の開発」に設定し、これを電子顕微鏡で観察しようと考えた。様々な発見があったが、このクラスター状態は、熱的には準安定状態で、加熱や光照射によって容易に有機部と金属結晶に分離するという一見面白くない結果を得た。この結果をゴミ箱に入れる前に、その分離状体を詳しく観察してみると、金属によって様々なナノ構造を発現することが判った。しかも、反応条件を整えれば、金属は炭素をグラフェン又はグラファイト化し、そして炭素から飛び出し、金属があった空間は空孔となり、金属が飛び出した出口はトンネルや噴火口となって外部と内部の間で分子が自由に行き来できるグラフェン壁で出来たメソ多孔性ナノ構造体を与えることが明らかになった。この材料は、2017年以降に発売される普及型燃料電池自動車の電極材料として使用される予定である。」

  連絡先 :  九州大学先導物質化学研究所 辻 正治

 

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2-2)西 信之 先生 箱崎地区講演会

講演題目 :「基礎科学の成果を如何に実用に持ち込んだか」

日  時 : 2013年12月6日(金) 16:00~

場  所 : 九州大学理学部化学第3講義室(2号 館2階2273号室)

講演概要 : 「九州大学理学部に着任時は、溶液中の分子の会合状体や分子クラスターの構造に関する研究を行うなど、基礎科学一辺倒であった。しかし、分子科学研究所に再び赴任し、巨額の研究費要求を文部科学省にする中で、基礎科学研究者は、社会への成果の還元を図る義務があるのではないか、と思い始めた。米国への視察旅行の途中、ホテルにファックスが来て、この目的のためのプロジェクト研究の代表者になるかどうか、直ぐに返事を寄こせとの依頼が来た。以来、この課題で苦しむことになるが、エタノール/水混合溶液中のミクロな相分離現象の発見は、グラフェン壁で出来たメソ多孔性炭素ナノ構造体の創成に繋がり、大量製造への道が開かれ、燃料電池心臓部に採用され、要する貴金属触媒の量を大幅に少なくした自家用燃料電池自動車の普及に貢献しようとしている。本講演では、土台となった基礎科学研究成果が、どのように実用への道に繋がったかについて述べる。」

  連絡先 :  九州大学大学院理学研究院 関谷 博  
        九州大学先導物質化学研究所 辻 正治