環境と研究

高分子合成と分子触媒


最後に、分子触媒を用いた化学反応の具体例をいくつか紹介します。

Kaminsky触媒
Kaminsky触媒によるエチレン重合

Kaminsky触媒
常温常圧下で、エチレンやプロピレンといったオレフィンの高分子化反応を進行させます。助触媒としてアルミニウム化合物(MAO)を用い、極めて高いオレフィン重合触媒活性を有します。分子触媒であるため、様々な触媒構造の改良が可能であり、反応性やポリマーの分子量、立体選択性などを制御することができます。


ATRP
金属触媒により制御されたポリスチレンの重合(ATRP) 参考文献:Matyjaszewski et. al. Science 1996, 272, 866-867.

ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)
この反応では、まず、Cu(bipy)Clがポリスチレン鎖の伸張のための触媒として働きます。1本のポリスチレン末端当たり1つの銅錯体種が結合した、銅末端を持つポリマーが合成されます。この高分子に、さらにスチレンを加えると、高分子末端とスチレンとが反応して、さらにポリスチレン鎖が伸張していきます。あたかもポリマーが生きているように見えることから、このような重合を「リビング重合」と呼び、高分子合成の分野において最近のトピックスとなっています。