• 九州大学
  • 先導物質化学研究所
  • 九州大学理学部化学科

研究内容

銀ナノ粒子によるプラズモニックナノシート

直径100 nm以下の金属ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴により特定の波長の光をナノ粒子近傍に強く閉じ込めることができます。私達の研究室では、粒径が揃った銀ナノ粒子をグラムスケールで大量に合成し、これを気水界面に展開することで、銀ナノ粒子からなる二次元自己組織化膜の作製に成功しました。私達はこの膜を「プラズモニックナノシート」と名づけ、基本的な光学物性および電気特性について調べると共に、バイオセンシング・バイオイメージングなどへの応用を目指しています。例えば、金属薄膜上にプラズモニックナノシートを積層すると積層数によって鮮やかな呈色変化がみられます。これは、銀ナノ粒子シート層間での局在プラズモンの結合による効果と、積層膜中への波長選択的光閉じ込め効果によるものです(プラズモニックフルカラー)。

プラズモニックナノシートを用いたバイオセンサー

プラズモニックフルカラーは、銀ナノ粒子積層構造のみで見られる現象ではなく、例えば、銀ナノ粒子と金ナノ粒子との組み合わせにおいても生じます。私達の研究室では、この現象を利用した新規バイオセンサーの開発を行っています。具体的には、銀ナノ粒子積層シートを検出基板とし、その上にごく微量の金ナノ粒子を抗原抗体反応により吸着させて、これを目視で検出することに成功しました。この方法を用いれば、健康に関わる様々な診断や環境試験を、一般家庭で簡易に行うことが可能です。

プラズモニックナノシートを用いた高感度蛍光バイオイメージング

細胞や生体材料の代表的な観察手法として、試料を蛍光色素で染色し、試料から発生する蛍光を観察する蛍光顕微鏡法があります。中でも、全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡では、全反射条件で励起されるエバネッセント光を光源として用いることで、基板界面近傍(~100 nm)を高いSN比で蛍光観察することが可能です。私達の研究室では、プラズモニックナノシートをTIRF顕微鏡の観察基板とすることで、界面からの発光をさらに増強させると同時に、より狭いナノ界面領域(~20 nm以下)の蛍光観察に成功しました。本手法を用いた接着細胞の観察では、細胞の接着界面を高い解像度で観察することに成功しています。生体材料とさまざまなナノ材料の相互作用も研究課題のひとつです。

その他

私達の研究室では、「ナノテクノロジー」をキーワードとし、プラズモニックナノシート以外にも様々な研究を展開しています。例えば、伝播型および局在型表面プラズモン共鳴を利用した、高効率LEDや太陽電池の開発、及びそれに関わる基礎研究を行っています。また、プラズモン共鳴中の金属ナノ粒子シートの電気特性から、プラズモン共鳴下における伝導電子特性を明らかにする研究など、プラズモニクスとエレクトロニクスの融合研究を行なっています。さらに、アゾベンゼンなどの光機能性分子と金属ナノ粒子を組み合わせた複合デバイス開発なども行っています。今後は、グラフェンなどの2次元材料のプラズモン特性や、プラズモニックナノ結晶を用いた新しいレーザーの開発に関する研究も行う予定です。