触媒効率と反応選択性の高い分子触媒反応:精密有機合成

銅触媒や、配位不飽和ルテニウム錯体による
原子移動型ラジカル環化反応およびラジカル重合反応

銅触媒を用いた反応
遷移金属による Kharash reaction

我々は、この反応の分子内化として、原子移動型ラジカル環化反応の開発を行いました。まずその例のひとつとして、銅触媒を用いた例を以下に示します。

銅触媒を用いた原子移動型ラジカル環化反応

この反応では、特に、含窒素二座配位子であるTMEDAやbipyridineを導入することで、反応性が劇的に向上することが分かりました。 この反応を応用することで、以下のような複雑な化合物の合成も達成可能です。

ルテニウム触媒を用いた反応
〜アミジナート配位子を持つルテニウム錯体

次に我々は、独自に合成したアミジナート配位子を有するルテニウム錯体に注目しました。これは、系中で容易に配位不飽和種を発生できるため、高い活性を持つことが期待されます。この反応を下に示します。

このように、アミジナートルテニウム錯体は、双環性ラクタム等を室温で容易に合成可能なだけでなく、分子間反応も室温下で容易に進行させる、非常に高活性な触媒であることが分かりました。

ルテニウム触媒を用いた反応
〜アルコキシ配位子を持つルテニウム錯体

また、我々は、同様に配位不飽和種を与えるルテニウム錯体として、アルコキシ配位子をもつ錯体にも注目しました。これは、簡単に合成でき、かつ高度に配位不飽和であるという優れた錯体です。

期待通り、ルテニウムアルコキシ錯体は、非常に高活性な触媒として働き、その結果広い基質汎用性を有することが明らかとなりました。 また、非常に高活性であるため、早く触媒失活するという問題もありましたが、これはピリジンの添加により抑制することが可能であり、より実用的な触媒反応の開発に成功しています。

(広い基質汎用性〜以下のような様々な化合物が合成可能)