触媒効率と反応選択性の高い分子触媒反応:精密有機合成

Si-Hにより誘起される(Ace)Ru3(CO)7触媒による
アミド、カルボニル化合物等の触媒的還元反応

分子触媒の中でも、複数の金属の集合体分子である有機金属クラスターを用いる触媒反応は、クラスターの特徴である金属の集合による特異な電子効果、また複数の金属で同時に反応基質を捕捉し活性化する効果などが期待され、単核錯体にない興味深い機能を有すると考えられます。
私たちは、このクラスター分子触媒に着目し、複数の金属間をフレキシブルな架橋配位子で連結した独自のクラスター触媒の開発と触媒反応への展開を行っています。


私たちが開発したアセナフチレンルテニウムカルボニルクラスター(Ace-Ru3(CO)7)は、水素分子やシラン類と容易に反応し、酸化的付加による生成物を与えます。

Ru3核クラスター触媒

Ace-Ru3(CO)7は、特にSi-Hを容易に活性化することが分かりました。


次に、この特性を利用して、さまざまな有機化合物を用いたヒドロシリル化を行いました。以下に、Ace-Ru3(CO)7の構造とその触媒により達成される様々なヒドロシリル化反応について示します。

Ru3核クラスター触媒とヒドロシリル化反応

特に興味深い点として、Ace-Ru3(CO)7は、ヒドロシランにより活性化され、様々な還元反応を触媒します。以下にその例として、アミドの還元反応を示します。

アミドの還元反応

このように、Ace-Ru3(CO)7クラスターは、通常の手段では達成するのが面倒なアミドを、室温下で容易に達成するという、非常に高活性な触媒であることが分かりました。その他にも、カルボニル化合物なども容易に還元することが可能であり、非常に実用性のある触媒反応であると言うことができます。