RESEARCH TOPICS 研究成果

AIが化学反応の行方を説明してくれる!

―コンピュータシミュレーションに対して説明を与える人工知能の応用―

大阪大学大学院基礎工学研究科の菊辻 卓真さん(博士後期課程修了)、森 勇介さん(博士前期課程修了)が金 鋼准教授、松林 伸幸教授と共に、分子科学研究所の岡崎 圭一准教授と先導研の森 俊文准教授と協働し、「説明可能なAI」と呼ばれる人工知能の技術XAIにより、化学反応において活性化した状態の遷移状態にある分子構造を説明できることを世界で初めて明らかにしました。

本学からもプレスリリースが発信されています。

 大阪大学大学院基礎工学研究科の菊辻 卓真さん(博士後期課程修了)、森 勇介さん(博士前期課程修了)が金 鋼准教授、松林 伸幸教授と共に、分子科学研究所の岡崎 圭一准教授と九州大学の森 俊文准教授と協働し、「説明可能なAI」と呼ばれる人工知能の技術XAIにより、化学反応において活性化した状態の遷移状態にある分子構造を説明できることを世界で初めて明らかにしました。

一般に化学反応は反応前にある反応物と反応後の生成物を区別し、その中間に遷移状態と呼ばれる活性化状態を取ります。遷移状態を正確に理解することは、反応にどれだけの時間がかかるのかを正確に予測することに直結するだけでなく、より高い効率で生成物の獲得を目指す反応工学において重要であり、これまでも遷移状態に関する理論が数多く提案されてきました。しかしながら、遷移状態は極めて不安定な状態であり、実際にどの分子構造が遷移状態に対応するのかを理解することは難しいとされてきました。

特に、コンピュータシミュレーションによって分子構造のデータが多数収集されるなかで、どれが遷移状態なのかを特定し、なぜ反応物へ戻らず生成物の方向へ反応が進むのかを説明することが求められていました。今回、共同研究グループは、タンパク質の構造変化(異性化反応)についてのコンピュータシミュレーションと「説明可能なAI」と呼ばれる人工知能の技術XAIを融合する研究を展開し、遷移状態となる分子構造を特定するだけでなく、化学反応の成否を決める要因が何かを説明できることを明らかにしました。これにより、人工知能を用いることで、遷移状態を的確に予測し、所望の反応物を高効率に選択する理論的方法を構築しました。本研究成果は、米国物理学協会が発行するJournal of Chemical Physics誌の2022年4月21日(木)出版号に掲載されました。

論文情報

タイトル
Explaining reaction coordinates of alanine dipeptide isomerization obtained from deep neural networks using Explainable Artificial Intelligence (XAI)
著者名
Takuma Kikutsuji, Yusuke Mori, Kei-ichi Okazaki, Toshifumi Mori, Kang Kim, and Nobuyuki Matubayasi
掲載誌
Journal of Chemical Physics
DOI
10.1063/5.0087310
関連リンク